2018年 日本公衆衛生学会発表
田島聖也(一般社団法人ふくしまスポーツプロモーション)
安田俊広(福島大学)
要介護認定者数は2000年に介護保険制度が施行されてから15年間で2.42倍となった。
厚生労働省は、定期的な運動実施による身体機能の維持・向上が要介護認定の予防施策として重要であることから、2006年「予防重視型社会システム」への転換を図る施策を打ち出し、全国各地で高齢者を対象とした介護予防運動教室が開催されるようになった。しかし、教室に参加することによって要介護化の予防効果を検証した報告は少ない。
そこで本研究では、高齢者対象介護予防運動教室の介護予防効果を検証することを目的とする。
A.実施運動教室概要
・筋力トレーニングマシンを用いた筋力強化運動(全6機種、各20~30回×1セット)
・教室のはじめにウォーミングアップ、終わりにクールダウンを行い、全体で1時間
・通年タイプの教室で、週2回まで参加可能(事前予約不要の来所型、送迎なし)
B.対象者
【全対象者】
834名(男:255名、女:579名)平均年齢72.7±5.6歳 2011年7月~2015年3月に1回以上運動教室に参加した者 |
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【参加群】 202名(男:78名、女:124名) 平均年齢74.2±5.5歳 2011年度~2014年度の1年度内に50回以上運動教室に参加した経験を有する者 |
【不定期参加群】
632名(男:177名、女:455名) 平均年齢72.6±5.6歳
2011年度~2014年度の1年度内に50回以上運動教室に参加した経験がない者 |
【不参加群】 398名(男:114名、女:284名) 平均年齢72.7±5.8歳 2015年4月時点で運動教室に参加していない者 |
C-1.研究方法① 累積介護認定率の算出
・Kaplan-Meier法(要介護認定=1、自立=0)
・エンドポイント(観察終了)は、要介護認定を受けた時点 or 死亡した時点 or 観察期間満了(=48か月)に到達した時点
・観察期間 【参加群】週1回かつ1年間参加した翌月~エンドポイント
【不定期参加群】教室初参加の翌月~エンドポイント
【不参加群】教室最終参加の翌月~エンドポイント
・有意差検定 ログランク検定及び一般化ウィルコクソン検定
C-1.結果① 累積介護認定率の結果及びグラフ
観察期間48ヶ月時点において、週1回以上の参加経験がある群(=参加群)の累積介護認定率は7.25%、不定期な参加経験がある群(=不定期参加群)は12.89%、教室に参加していない群(=不参加群)は18.75%で、教室への参加頻度が高い者の方が累積介護認定率は低かった。
ログランク検定と一般化ウィルコクソン検定にて各群の有意差検定を行った結果、週1回以上の参加経験群(=参加群)と参加していない群(=不参加群)の間では有意な差が認められた。よって、週1回以上参加している者(=参加群)は教室に参加していない者(=不参加群)と比較すると有意に累積介護認定率が低いことが認められた。
累積介護認定率の推移を見ると、週1回以上の参加経験群(=参加群)が48ヶ月時点で7.25%だったのに対し、参加していない群(=不参加群)は14ヶ月時点で同等の水準に達していることがわかった。これにより、週1回以上の参加経験(=参加群)は教室に参加していない者(=不参加群)と比較すると、34ヶ月の要介護認定の遅延効果があったと考えられる。
以上の結果から、高齢者筋力トレーニング教室へ定期的に参加している者は、参加していない者と比較すると、累積介護認定率が有意に低く、約3年の要介護認定遅延効果があることが示され、介護予防事業としての役割を果たしているということが明らかとなった。
C-2.研究方法② Cox比例ハザードモデルによるハザード比の算出
(累積介護認定率の比較において有意差が認められた群を検証)
・目的変数 認定=1、自立=0
・説明変数 年齢(+1) 性別(女=0、男=1) 教室参加状況(参加群=0、不参加群=1)
C-2.結果② Cox比例ハザードモデル(参加群と不参加群 合計600名)
ハザード比 年齢 1.197 (95%CI:1.146-1.251)
参加状況 5.389 (95%CI: 2.531-11.474)
性別 変数選択段階で排除
不参加群は参加群よりも約5.4倍、要介護認定を受けやすいことがわかった。